リリース:1981年
コメント:カーンさん第二章の幕開けであると共に、フュージョン(というカテゴリよりも、コンテンポラリー・ジャズと呼んだ方が良いのかもしれませんが)史上に語り継がれるであろうユニット「アイウィットネス」での一作目でもあります。
アンソニー・ジャクソン(b)、スティーブ・ジョーダン(ds)、そしてマノーロ・バドレーナ(perc.)からなるこのユニットが繰り出す音楽性の高さにこそ、このユニットが唯一無二である理由なのだろうと思います。
元々、A.ジャクソンとS.ジョーダンは少し前までジョン・スコフィールドとのトリオで演奏をしていたのですが、このライブを観たカーンさんは「自分のやりたい音楽には彼らが不可欠だ」とピンっと来たんだそうです。
ジョンスコさんとカーンさんは共に東海岸におけるユニークで有能なギタリストとして有名であり、かつ、当人同士も非常に仲が良かった事もあって、カーンさんがアイウィットネスを立ち上げる際に(当然、ジョンスコさんのイイ返事を元に)この両名を招集したんだそうです。
'70s中後期のフュージョン期におけるカーンさんは良くも悪くもバンドとしての(少々大所帯な)形態によるパワー優先的な部分にウェイトがあったのも事実かと思います。
が、アイウィットネスは非常に小さなセットであり、また、そこで生み出される音は計算されている事を意識させないような「遊び」の部分と、四者によるよる広い空間の使い方が高度にブレンドされたものであると言えます。
'70sよりもインテリジェントな印象を強くしたようなカーンさんのギター、まさに空間芸術とも言いたいスティーヴ・ジョーダンのドラム。
特にラテン的なエッセンスを加える上で欠くことの出来ないマローノ・バドレーナのパーカッションも加われば、後はカーンさんの筆(ギター)が何を描くかしっかりと見据えるのがファンの務めかと(笑)
#多用されていますが、小生は(今はまだ)S.ジョーダン派です(^^;)
個人的なヘヴィー・ローテーションは[1]、[2]辺りでしょうか。シリアスな響きを伴うコードを散りばめた[2]に対して、[4]は軽い感じのファンキーな楽曲で、双方ともやはりメロがカーンさんらしいちょっとひねり気味です。
この辺りはちょっとした茶目っ気も楽曲にうまく組み込むニューヨーカー的な感覚なのかも知れませんが、[2]のタイトルにあるMumphreyとは、その昔N.Y.ヤンキースで活躍した選手の名前で、丁度、この作品を書いている時にその選手が絶不調だった事で皆が「Where's Mumphrey?(マンフィー、どうしちゃったんだ?)」と言っていた事をヒントにしているとか。
また[4]のGuy Lafleur(ギ・ラフロイヤー)というのもカーンさんが好きなアイスホッケーの選手の名前を拝借しているそうです。
加えて、[2]はカーンさんが日本に滞在中に目にした某ジャパニーズ・アニメにインスパイアされた、という話があります。
小生の手元にはCDの他に初期プレスのアナログ盤(トリオレコード)があるのですが、そのアナログ盤のライナーにはカーンさんが語ったとされるこんなコメントが書かれていました。
「今の日本のフュージョンファンは、フュージョンの音楽性を受け入れているのではなく、フュージョンの単にムーディーな部分を受け入れている、そんな日本の人に僕は僕の考えを聴いてもらいたい」
上記の発言は、本作リリースよりも前に語られたものらしいのですが、カーンさん自身がある意味、アイウィットネスとしてやろうとしていたのが明らかにフュージョンではない事が判る言葉かなと思います。
本作、少なからず一度はCD化された経緯はありますが、今はとうに廃盤の憂き目にあっております(再発売された経緯もないようです)。むしろ、本作がリリースされた頃('82年)だとまだまだアナログ盤が幅を利かせていた時代ですので、中古レコ屋でアナログ盤は見かけることがあります。
この辺りの扱いが改善?されないことには、なかなか多くの人にアイウィットネスをお知らせするのは難しいですねぇ。
閑話:
アナログ盤に収録されている曲順はCD盤とは若干異なっていおります。上記レビューはCD盤収録順で記載しています。因みにアナログ盤の収録順は次のようになっています:
A-1.Auxiliary Police
A-2.Where's Mumphrey?
A-3.Eyewitness (For Folon)
B-1.Dr. Slump
B-2.Guy Lafleur
1.Where's Mumphrey?
2.Dr. Slump
3.Auxiliary Police
4.Guy Lafleur
5.Eyewitness (For Folon)
0 件のコメント:
コメントを投稿